諫早市在住の社会福祉士、豊福和範さん
あるご縁があって、取材させていただきました。
豊福さんは、自らを「トイレ検索士」と名乗り、障害者や子育て中の方が使いやすいトイレの調査をされています。その数約2,000か所(実数)
10年の月日をかけ、全くのボランティア(自腹)で県内を巡り、調査した結果は、自身のホームページで紹介をされています。
ホームページを見ると、市町村別(地区別)にトイレの住所、外観の写真、便器の様式、手すりの位置、ベビーベット・ベビーチェア・駐車場の有無に至るまで丁寧に表示されています。すごい!
「どうしてそんなことをしようと思ったのですか?」
と尋ねると「それは、やはり”明日は我が身”ということですね。」と答える豊福さん。
そもそもは、介護施設に勤務していた際、利用者の外出行事のために、目的地と道中のトイレ(特に洋式トイレの有無)を事前に調査していたことがきっかけだったそうです。
また、同じ頃に、我が子の育児が始まり、父親でもおむつ交換ができる場所を知りたくて、公衆トイレのベビーベットも調べるようになったとのこと。
さらに、ご本人が脳梗塞を発症し、リハビリを経験する中で「多目的トイレといっても、障害の部位や程度によっては使いづらいトイレがある。」ということに気づき、手すりの位置やオストメイト、大人用シートなどについても詳しい調査をされるようになりました。
「こんな経験をした私だからこそわかる、当事者や介護者にとって利用しやすい設備や公衆トイレの重要性を訴えていきたい。」と豊福さんは言います。
お話を聴いて特に印象的だったのは、「排泄を失敗した場合の視点」ということでした。特に車いす利用者は、運動力が少なく、内臓への刺激も少ないため、自力で排便することが困難で、服薬による排便となるため軟便になりやすく失敗することが多い。だから、失敗した時にどう回復できるか(具体的には、トイレの中で安心して着替えられて、汚れた下着や服を洗うことができる等)という視点が大事なのだそうです。
最後に「何か伝えたいことはありますか?」と尋ねると
「多くの健常者が、明日は我が身という視点をもって、トイレに関心をもってくれると嬉しい。そして、自分のホームページをできるたけ多くの人に知ってもらって、必要な人に活用してもらいたい。」ということでした。
「どこかの誰かのために」そんな思いで真摯に活動されている豊福さんには本当に頭が下がります。ここで紹介させていただくことで、情報が広がっていったらいいなと思います。
写真、文/村川美詠