グルメ

めん工房「草ぶき」
わらぶき屋根が目印 古くて懐かしいものに出会える麺処

【住所】諫早市森山町本村777
【電話番号】 0957-36-0887
【URL】 https://www.facebook.com/kusabuki
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森山町の国道57号線沿いにある、わらぶきの屋根が目印の麺処と言えば、めん工房「草ぶき」だ。そばとうどん、それぞれの通の喉をうならせる、麺好きにはうってつけの店である。

店舗は昔、寺子屋に使われていた古民家で150年以上の歴史がある。薪ストーブに古時計、小上がりのある店内は昔ながらの佇まいで、染付や赤絵のそばちょこがずらりと飾られている。
レトロな雰囲気は日本の麺を食べるのにぴったりで、さらに女子の心をくすぐる。

工房というだけあって、麺にはとてもこだわっている。そばは風味を生かすため、独特の製法で石臼挽きにし、毎朝、開店直前に細めの手打ちにする。うどんも国産の粉だけを使い、季節によって配合を変えるそうだ。鰹、昆布、いりこなど、自然のものだけでとった自慢の出汁は味も香りも抜群である。

「うどんとそば、それに古いものが大好きなんです」と、
店主の岩本継之助さんは屈託のない笑顔で話す。

創業は昭和54年。
長年、飲食業を営んできた岩本さんの父一博さんが、一番好きな食べ物「麺」の店を開き、父の背中を見て育った継之助さんが後を継いだ。今は家族ぐるみで店を経営している。

この日は継之助さん一押しの鴨汁そばをいただいた。
冷水できゅっとしめた艶のあるそばが、ざるにこんもりと盛られ、分厚くて柔らかい鴨肉とネギがたっぷり入った熱いつゆが添えられている。ここはやはり、ずずずっと、ジャパニーズノイズを楽しみながらいただきたい。「うん。うまい!」。麺は少し細めで濃厚なつゆによく絡む。昼間だったので飲まなかったが(飲みたかったけど)、お酒にもバッチリあうだろう。何とも記憶に残る味である。

メニューは40種類あまり。麺のほかにも、肉じゃが、牛丼、鰻の蒲焼、さつま芋に餅を練り込んだ「びおたれ」という甘味などもある。私のお気に入りは手作りのコロッケ。注文してから揚げられるので、衣はサクサク!中はしっとりしていて、熱々を頬張ると優しい味が口いっぱいに広がる。

3人の子どもがいる継之助さんは、子どもたちにも食べてもらえる安心安全な材料しか使わない。ほとんどが地元の食材で、野菜やお米は契約農家から仕入れている。
さらに揚げ物で使った油は、捨てずに環境に優しい廃油石鹸へと形を変え、来店客に無料で提供している。

すべてのものに作り手の愛情がにじみ出ていて、
心も身体もほっこりする。

草ぶきの魅力は食事だけではない。大人も子どもも楽しめる、
おとぎの国のような遊びのスペースがあちらこちらに潜んでいるのだ。

昔懐かしい駄菓子や、おもちゃが並ぶコーナー。秘密のあじとのような陶芸小屋もある。店で使っている湯飲みや茶碗は、継之助さんと一博さんのお手製だ。小屋に並べられた作品は購入することもでき、毎年、年末に作る干支の置物は焼きあがる前から完売する人気商品らしい。

最後に細い木の階段を上って屋根裏部屋へ。
実は屋根裏部屋はギャラリー兼イベントスペースになっている。藁と木と竹だけに囲まれた空間には、まるでピラミッドパワーが溢れているようで心が癒される。何とこの屋根裏部屋は無料で貸してもらえるので、個展やライブ、座談会の場所をお探しの方に是非おススメする。それこそ寺子屋を開いても面白そうである。

麺好きに愛され続ける草ぶきでは、美味しい料理はもちろん、
残したい日本の文化、古くて懐かしいものに出会える。

そして、そのノスタルジーさが、今、新しい。

「自然のものだけでできているこの店を、これからも手をかけて育てていきたい」。わらぶき屋根を見ながら目を細め、そう語る継之助さんを思い出し、また草ぶきに行きたくなる。

2014年1月10日 / 記 数原有希子
            写真 Photographer MILK 川原孝子

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