グルメ

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中原とらき商店
諫早と鯨 
~伝統優良食材である鯨肉の食文化を守るのは、刻んできた歴史と人の思い~

【住所】 諫早市天満町3-4
【電話番号】 0957-22-1162
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「鯨と長崎」の歴史は古い。

江戸時代、長崎県東彼杵に水揚げされていた鯨は九州各地へ運ばれていた。
長崎へは輸送距離が短いため新鮮な鯨が、そして当時唯一外国との窓口を設けていたため経済的にも裕福な街であったことから、美味しい鯨の部位が食べられるとして、「長崎の鯨の食文化」が広まったと言われている。
現在、鯨の消費量が、全国で一番多いのは長崎県であるということが、それらを物語っている。

諫早も長崎に負けず劣らずと「鯨の食文化」が根付いている。
現在の諫早市津水町に鯨が水揚げされていたこともあり、昔から諫早庶民の台所でも、くじらは欠かせない食材でもあった。

また、八天町にある光江橋の近くには「鯨塔」が立っている。
その昔、不漁が続き生活が困窮しているとき、漁区に大きな鯨が迷い込んできたおかげで無事に正月を迎えることができたそうで、鯨塔はその鯨を慰霊するためのもだと言われている。

津水町付近が鯨肉の荷揚げ場所であったことや、鯨塔に由来するエピソードにも起因しているのだと思うが、今でも諫早の多くの飲食店では鯨料理を食べることができるし、諫早市内に4店舗ある鯨専門店では、「鯨肉」を購入することもできる。

鯨肉は伝統優良食材だ。
「高タンパク」「低脂肪」「低カロリー」と三拍子そろっているうえ、鉄分や免疫力を向上させるビタミンAも豊富。
頭を良くすると言われているDHA(ドコサヘキサエン酸)や、最近鯨の肉に発見されたバレニンは体脂肪を効率よく燃やし疲労物質の発生を抑える効果があるらしい…とくれば、子どもから大人まで、特に女性にとってはぜひとも口にしたい食材の1つだ。

鯨は高級食材というイメージがあるが、今回取材で訪れた「中原とらき商店」の店主、中原信行さんと妻の初美さんが、「鯨も部位によっては手軽に手に入る。ぜひ日常の食卓に鯨を並べてほしい」とたくさんの料理を作って下さった。
煮しめ、ひじきの煮物、竜田揚げに鯨のカツなど、ずらりと並んだ料理のすべてに鯨が使われている。

商業捕鯨の時は、黙っていても右から左、倉庫に積みきれないほどの商品が手に入ったが、調査捕鯨になり状況は一変。父から受け継いだ「中原とらき商店」を閉めることも考え、家族で何度も話し合ったと、店主の中原信行さんは当時を振り返る。
「鯨は栄養価も高くいい食材であることは間違いないのだから、たくさんの人に食べてほしい。だったら一切れも入ってこなくなるまで自信を持って売っていこう」と決断した信行さんは、改めて「鯨」と向き合った。そして、諫早と鯨の歴史や鯨そのものに関しての知識を深めていくうち、以前よりも愛着がわき、商品の加工に関しても工夫をするようになったという。
諫早から鯨の食文化をなくしてはいけない…、そんな思いもあったのかもしれない。

妻の初美さんは、子育て世代の食卓にも鯨を使ってほしいと、来店する人との会話の中で「日常の夕飯」に並ぶような料理のレシピを伝えている。
「若い人が買い物に来たら嬉しいんだろうね、おまけが多いんだよね」信行さんは初美さんを見ながら頬を緩める。

諫早と鯨。
そこには、刻んできた歴史だけではない、育んできた「人の思い」があるのだと感じた。

諫早駅から徒歩7分。
諫早に来たら、笑顔が素敵な中原夫婦が営む「中原とらき商店」にぜひ足を延ばしてほしい。

鯨の料理の仕方を知らずとも初美さんからはレシピを教えてもらえるし、信行さんからは「諫早と鯨」のさらに深い話が聞けるかもしれない。
出逢いとおしゃべり。それらは鯨肉とともに「諫早土産」として、きっと思い出深い逸品になることだろう。

2013年11月20日/記:内田輝美
            写真 Photographer MILK 川原孝子

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